物流共同化実態調査研究 報告書
日本物流学会
はじめに
中田 信哉
日本物流学会・副会長
神奈川大学教授
「物流の共同化」あるいは「共同物流」というのは古くて、新しいテーマである。というより既に40年以上前から取り上げられ、それ以来、今日まで絶えず計画がされ、研究がされ、実験が行われ、実際にプロジェクトとしてスタートがされてきた。
全国的にみるとそのケースは数百件にもなるに違いない。私の記憶では既に1950年代半ば(昭和30年代)に日本橋堀留において警察の指導により、繊維関係の商社の有志達による地方への共同発送、近郊への共同配送が試みられている。
戦後の復興の中で、経済の高度成長による都市中心部の交通混雑解消や企業の物流力の不足への対応として「協力して事態に対処する」ということから輸配送を中心とする物流の共同化が始まったと思われる。
このころから各地の中心商業集積地、商店街、卸商業団地、あるいは生産量・販売量が拡大したメーカー間など種々のシーン、シチュエーションにおいて物流共同化は行われていた。
当初は交通問題や物流効率化という視点から取り組みがはじまり、やがて、経営戦略的目標が組み込まれ、今では環境問題も大きな位置が与えられている。
物流共同化の効果を考えるなら、それは単に企業の問題ではなく、社会的な意味も大きいことから行政の物流政策としても考えられ、その実験、研究、実施においては公的な資金も多く投入されている。
しかし、この40年間、物流共同化は全国で数え切れないほど企画され、実験が行われ、実行がなされてきたにもかかわらず、それが本当に成功し、定着したケースは数えるほどしかないと思われる。
同じ話が何回もあらわれ、実験、実行が行われても同じことのくり返しであり、前例の成功、失敗が役にたっていない気がする。それはケース毎の内容が非公開(部分公開を含む)かあるいはそれを研究する意欲のなさなのか、いずれにしても長い年月、多くの労力、多大な資金を投入しつつ未だに物流共同化の普遍的な方法、モデル、理論の確立はない。
当研究はその反省から過去の物流共同化を取り上げ、整理をし、普遍的をはかる試みであった。当初は少数の有志による地道かつ遅々とした研究であったろう。
しかし、幸いなことに日本ロジスティクスシステム協会(JILS)による日本物流学会への研究助成が行われ、それによって研究が軌道に乗った。
その結果、この報告に示されるような貴重な研究成果としてあらわされることになった。今後はこの内容の細密なる分析が控えている。それは今後の課題でもある。
資金的助成を下さったJILS及びそれに日本物流学会の研究プロジェクトとして認められた学会に対して御礼を申し上げるものである。
目次
はじめに
エグゼクティブ・サマリー
研究メンバー
第?部 物流共同化の実際
第1章 物流共同化の歩み
第2章 物流共同化の事例
第3章 代表事例の個別分析
第4章 成功要因・失敗要因を探る
第?部 物流共同化の周辺
第5章 物流共同化を支える技術
第6章 物流共同化を支える公的支援
第7章 物流共同化に関する文献解題
あとがき