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なかなかおもしろいタイトルだが、その内容は営業のノウハウというよりは、マーケティングよりである。
著者のジョン・スポールストラは、NBA(全米バスケットボール協会)で観客動員数最下位だったニュージャージー・ネッツを、27球団中チケット収入伸び率1位にまで導いた人物である。本書の魅力は、このスポーツビジネスを通して彼が商品を売るためにとった数々のマーケティング手法を、そのドキュメンタリーのなかで学ぶことができるところにある。
彼の成功は確かに驚異的であるが、そのマーケティング手法はおおかたマーケティングの基本に沿ったもので、際立って目新しいものはないだろう。注目すべきは、与えられたビジネス条件を徹底的に分析し、持てる資源を最大限に生かしたその戦略であり、どんな小さな材料も効果的に利用したことである。とかくマーケティングというと企業は多額の予算を使った大きな戦略をとりたがるものだが、彼は大きな広告をうつよりも、時には顧客それぞれに直接アプローチする方が効果的なことを知っていた。
また彼は「売れる企業」にするために、「投資」や「改革」を阻む財務屋体質の経営者、企業からの脱却を訴え、マーケティングを最優先させる企業の在り方を説く。「ミスにボーナスを出す」「経営が厳しくなったらセールススタッフを増やせ」など一見突飛とも思えるアイデアも登場するが、その根拠には読み手を納得させるだけのものがある。
戦略においても、企業改革においても、人間の心理をついた鋭い状況判断、「変化」を恐れない彼のマーケティング体験からはビジネスマンとして学ぶことが多い。読み進めていくうちに彼のマーケティングにかけるエネルギーが伝わり心地よい充実感に包まれることだろう。(大角智美)
内容(「BOOK」データベースより)
観客動員数最下位の全米プロバスケットチームを、最弱のまま高収益チームへと変貌させた奇跡のマーケティング。どんな分野の、どの商品にも、どの企業にも適用できる目からウロコが落ちる驚くべき手法。
商品には、あってはまずいところに欠点があるもの
顧客一人ひとりに、もう少し買ってくれるように直接頼む
顧客が買おうと思い立つ少し前に、アプローチする
少額だが、非常に目につくお金をクレージーなアイディアに使う
ミスにボーナスを出す
自社の商品が、われわれを救うことはない
「テロリスト・グループ」をつくり、状況を変える
顧客が買いたがる商品だけ売る、少しだけ多く売る
エド・ゲルスソープのルール
一つだけのセグメントへのマーケティング
リサーチにだまされない
クライアントをヒーローにする
「わが社ではいつもそうやってきた」は、何かが間違っている最初の警告
買わずにいられない商品をつくる
どうすれば、バックルームを顧客のための部署にできるか
すてる顧客を選べ
60万ドルと3万2000ドル、どちらを選ぶ。