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■日本郵船/「人間力」で難局を乗り越えよう、第126回創業記念式典で社長挨拶
「人間力」で難局を乗り越えよう−第126回創業記念式典で社長挨拶−
2011年10月3日




 当社の第126回創業記念式典が10月3日、東京都千代田区の本店で開催され、社長の工藤泰三は次のように挨拶しました。
 
東日本大震災と復興支援
東日本大震災の発生から半年がたちました。被災された皆さまにあらためてお見舞い申し上げます。引き続き1日も早い復興をお祈りするとともに、当社グループとしても復興支援活動を継続していきたいと考えています。震災によって生じたサプライチェーンの寸断が、日本のみならず世界経済に大きく波及したことは、海運・物流事業が世界の経済活動に密接に関わっていることを示しており、社会的責任をあらためて再認識する必要があります。
 
事業環境と業績
 日本の景気は、震災直後の大幅な落ち込みを乗り越えて回復に向かいつつありましたが、1ドル=70円台という超円高が続き、その回復傾向も危うい状況にあります。
 
海外でも経済の下振れリスクが高まっています。米国景気の緩慢な成長や米国債の格下げの影響も懸念されます。欧州でも景気回復が頭打ちとなり、PIIGS(※1)諸国の財政金融不安も長期化の見込みです。堅調な成長を持続してきた新興国も、世界経済鈍化の影響を少なからず受けています。
 
 このような環境下、海運業界では需給ギャップによる市況低迷が続き、加えて超円高・バンカー高も追い打ちを掛けており、大変厳しい状況と言わざるを得ません。
 
当社業績も需給ギャップが顕著なコンテナ船、ケープサイズバルカー、VLCCなどで苦戦を強いられ、さらに第1四半期は震災で甚大な影響を受けた自動車輸出が極端に落ち込んだため、2011年度上半期の当社連結決算は前年同期比減収となり、大変遺憾ながら損失計上が見込まれます。しかし第2四半期以降の完成車輸送の需要回復は明るい材料であり、物流やターミナルなどの非海運部門では、着実に利益を上げています。下半期も厳しい環境は続きますが、通期での黒字確保に向けてグループ一丸となって頑張りましょう。
 
今後の戦略
当社グループの置かれている事業環境を、あらためて考えてみましょう。リーマン・ショックを物流業として捉えれば、米国・欧州の一部の異常ともいえる過剰消費が終息し、本来あるべき物量に回帰した事象といえます。今後アジアから欧米向けのコンテナ荷動きの伸びは、当時の2桁台から6%前後に落ち着き、好調なアジア域内の荷動きを加味した全世界の物量も7%前後の伸びというのが、当社調査グループの予測です。
 
2003〜2008年、想像をはるかに超える中国の資源輸入急拡大により、供給が逼迫(ひっぱく)し空前の異常高騰マーケットを経験しましたが、今では供給が需要に追い付き、中国の輸入拡大のペースも落ち着いてきました。
 
船舶の保有のみで差別化できた幸運が過ぎ去り、通常のビジネス環境に戻った上、発注から竣工までのタイムラグの結果、足元の需要を上回る新造船が投入されるため、当分船腹過剰は続きます。このような中、われわれはいかに生き残っていくのか?それは、4月にスタートした新中期経営計画"More Than Shipping 2013"(MTS2013)の徹底しかありません。"More Than Shipping"は「船+(プラス)α(アルファ)」という意味ですが、具体的には「船以外」の領域と「高度な安全運航・操船技術を要する船」の領域とで、差別化を図る戦略です。
 
一般貨物輸送事業
消費財を中心とした一般貨物の輸送需要は人口増加に比例して着実に伸び、世界のコンテナ荷動きは前述の通り7%前後の増加予測です。一方、新造コンテナ船は2013年に向けて年率10%も伸びる見込みで、この需給ギャップによる市況の悪化をどう克服するかが、最大の課題です。
 
この対応として、当社グループはコンテナの船隊規模で他社と競うのではなく、貨物の集荷力・量で勝負します。船腹過剰が明白で、近々さらに燃費効率の良い船の開発が見込まれる中、船を建造する必要はなく、当分は船・スペースを借りて輸送するライトアセット化の方針を継続します。その間の重要な課題は、営業力強化です。そのために推進すべきは、陸上部分のコントラクト・ロジスティクスなどを利用した差別化となるでしょう。ただしこの分野も、単に倉庫やトラックを持てば事足りるわけではなく、それらをいかに「ムダ・ムラ・ムリ」なく効率的に活用しコスト競争力を維持するか、われわれの創意・工夫、まさに「人間力」が不可欠です。そのためには、郵船ロジスティクス株式会社(YLK)の当該部門と協力し、改善活動や人材育成を積極的に進めねばなりません。またYLKは、航空・海上フォワーディング、コントラクト・ロジスティクスというフルメニューをそろえた統合メリットを最大限活用の上、お客さまとの接点をさらに増やし、全部門、特にNVOCC(※2)の業容拡大が急務です。
 
不定期専用船事業
震災直後に大打撃を受けた自動車船部門は、今後輸送需要の上振れが見込まれます。お客さまが要望する輸送計画に対応できるよう、より一層の効率的な配船と運航を心掛けてください。また新興国向けの海外生産はますます増加傾向にあるので、海上輸送のみならず、RORO(※3)ターミナルや内陸輸送網の整備を着実に進めてください。さらに大きなスタティック貨物(※4)の輸送も可能ですので、本邦屈指の重量物輸送会社である日之出郵船株式会社との協業を推進し、プラント・プロジェクト貨物拡大も図ってください。
 
ドライバルク部門については、船腹の供給過剰が少なくとも2013年まで続く見込みです。ケープサイズ、パナマックスを中心に、市況に左右されるフリー運航船隊規模の適正化を迅速に進めることも必要ですが、海外の顧客層を拡大する営業活動強化が急務です。営業力・コスト競争力・提案力の勝負となりますが、幸いわれわれには全世界を網羅する定期船のネットワークと世界屈指の船隊がそろっています。これを最大活用し、バラスト・レグ(※5)を最小にする営業活動などを徹底していけば、必ず成長軌道に復帰できます。とにかくドライバルク部門として、大西洋や成長著しいアジア市場への出遅れ感があったのは事実であり、今度こそ「お客さまの近くに」を徹底する必要があります。
 
リキッド部門については、VLCCの船腹過剰が当面続く見込みですが、アジアを中心とした新興国の原油需要は間違いなく伸張しますので、この地域での営業活動強化を継続してください。成長領域のLNG(液化天然ガス)・海洋事業の展開も鍵となります。震災後の原発事故の影響で、日本のみならず世界全体が発電エネルギーのポートフォリオを見直しつつあり、特にLNGが注目されています。アンテナを張りお客さまのニーズをくみ取ることが肝要です。
 
安全・環境・技術
MTS2013では、資源・エネルギー輸送の拡大を掲げています。これには徹底した安全運航技術や、海洋事業でのより高度な操船技術が必要で、この技術が差別化戦略の一つとなります。
 
バンカー高や、二酸化炭素(CO2)・硫黄酸化物(SOx)・窒素酸化物(NOx)・バラスト水などの環境対策は非常に深刻で重要な課題ですが、これも技術力によって差別化できる領域と捉え、積極的に対応しましょう。LNG燃料船などの新技術は、当社グループのコスト競争力向上と地球環境保全の両方に貢献することになりますので、検討から実践のステージへ早期移行を目指しましょう。
 
省エネおよびコスト削減の観点で減速航行は最大の即効薬ですが、運航担当者と本船側の緊密な連携と手間を惜しまぬ地道な努力が、その実効を大きく左右します。
 
コーポレート部門
MTS2013の戦略実行には、それを支える仕組みが必要で、コーポレート部門はその重責を担っています。全社の枠組みでの投資・財務・予算管理活動を通じて、各事業部門の分析をし、グループの全体最適の面からあるべきポートフォリオの立案が求められます。海外展開の加速化に際し、資金や人材といった経営資源の配分をグローバルな観点で押し進めることも課題となります。
 
コンプライアンスも極めて重要な経営課題です。独占禁止法・競争法への真摯(しんし)な対応は言うまでもありませんが、最近世界中で外国公務員贈賄規制が強化されています。コンプライアンス違反に対するペナルティーは甚大で、企業経営そのものを揺るがすものであることを常に念頭において行動してください。
 
このように極めて重要なコーポレート業務ですが、コストを無視できないことは、皆さんも十分認識していると思います。当社グループ全体のコスト競争力を左右する要素ですので「ムダ・ムラ・ムリ」を省き、業務の効率性追求を心掛けてください。
 
グループ社員の人間力で
現在置かれている事業環境は非常に厳しい状況ですが、世界経済における物流の需要は、着実に増えていく成長産業であることに間違いはありません。あとはハードの差別化の領域が狭いという問題を克服し、利益を常に確保できる仕掛けづくりをいかに創出するか?それは正しい情報を素早くつかみ、スピード感を持って意思決定していくと同時に、"More Than Shipping"の"+α"戦略実行しかありません。それを支えるものは、何よりも個々の「人間力」です。NYKグループバリュー「誠意・創意・熱意(Integrity、Innovation、Intensity:3 I's)」で、一緒に頑張りましょう。
 
最後に、皆さんとご家族のますますのご健康、ご多幸を祈念して、私の挨拶といたします。
 
 
(※1)PIIGS:欧州の中で特に経済基盤が弱いとされる国の総称
(※2)NVOCC:Non-Vessel Operating Common Carrier。船舶を所有せずに国際複合輸送を取り扱う輸送業者
(※3)RORO:Roll on / Roll off。自走、またはけん引車両での荷役
(※4)スタティック貨物:自走しない重量貨物。工場設備、鉄道車両など
(※5)バラスト・レグ:空荷航海。船が貨物を積まずに航海する際、安全上必要な喫水を確保するため、バラスト水(海水)を積むことから
以上
 
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