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物流業界に新風吹き込む“二代目”の企業内ベンチャー

 時流にのった新しいビジネスモデルを実践すべく、角井亮一社長(33)は昨年の2月に株式会社イー・ロジットを立ち上げた。父親が経営する東大阪市の中堅倉庫会社・光輝物流から出た企業内ベンチャーだ。
 角井社長が注目したのは、着実に成長しているEコマース(EC)市場。しかし、中小企業や個人事業者がECに参入するケースも目立ちはじめているが、その台所事情は、“お寒い限り”というのが大半だ。扱う商品の単価は半数以上が1万円未満。その上、ロットが小さいことも手伝って物流費が売上の30%を超えることもめずらしくない。
「宅配便を定価に近い料金で利用しているようなネット通販業者がほとんどであることがその原因です。彼らを集めてボリュームディスカウントしたら、もっと物流コストを抑えられるはず、と考えました。つまり、物流サービスの共同購入組合のようなものができないかと・・・」
 現在、イー・ロジットが展開している物流アウトソーシングサービスは、ネット通販業者と物流会社の仲立ちといったもの。その仕組みは次のようなものである。

配送コストが10%ダウン


まず、ネット通販業者が注文を受けた後、データを電送するとイー・ロジットは商品集荷・配送ルートなどから物流会社を選び、実際に集荷・配送を手配する。さらに光輝物流の倉庫などを利用して梱包作業や商品の在庫管理といった業務を請け負うこともする。
 同社は、パートナーである物流会社の配送コスト、サービスの品質といったもののデータベースを持つ。そのデータベースに「ソフトウェア特許」を取得したあるロジックを与えることで、商品特性や配送地域などの条件から最適な物流会社に振り分けるシステムを構築している。
 そうしたシステムを用いることで受注から出荷までのリードタイムの短縮を実現するとともに、一般的な宅配サービスよりも配送コストを10%は下げることができるという。これまでに最大で60%の物流コストを削減した実績もあるというから驚きだ。
 つまり、物流会社を叩いて「価格破壊」を行うのでなく、運送方法の効率化によってコストを下げるという手法である。
 これらのビジネスアイデアは、物流業界の内情に詳しくなくては到底考えつかないもの。もちろん角井社長の場合、光輝物流での経験が生きている。

カルチャーが違う・・・


 とはいっても、角井社長が光輝物流にいた期間はそれほど長くない。「父親の会社を継ぐ」という含みで入社したものの、2年後にはイー・ロジットを立ち上げてしまった。
 なぜ、光輝物流として新たなビジネスモデルを展開しなかったのか−。疑問に感じるかもしれないが、そこには角井社長の深い考えがあった。
「読むのはスポーツ新聞、夜7時になれば誰もいなくなるような会社がほとんどというのが物流業界の現状です。光輝物流も少なからずそんな色に染まっていました。24時間対応は当たり前で、スピーディーさが売りとなる先進的なネットビジネスとでは、カルチャーが違いすぎる。それなら、まずは『新会社を設立したほうがいい』と考えたのです。そうしないと、他の者に先を越されてしまうかもしれない」
 そう思って、光輝物流社長である父・角井勝美氏に打診したものの、首を縦に振ってもらえなかった。一人息子の行く末を案じてのことだろう。光輝物流は勝美氏が起業した会社である。会社を立ち上げ、育てていくことの難しさを身をもって知っていたのだ。
「懸命に説き伏せました。しまいには、仕方なしに“折れた”という感じで許してくれましたね」
 そのうえ開業資金として最低限必要だった3000万円のうち約半分を出資してくれた。
「いつかは起業したい、という気持ちはあった。光輝物流に入社する前にいた船井総研でのコンサルティング経験を実践したかったという気持ちと、アメリカ留学中に出会った魅力ある経営者たちへの“あこがれ”といったものが心の底にあったかもしれません」
 また、光輝物流時代にアパレル会社との間で、物流コスト削減実績から報酬額をだす「ゲインシェアリング契約」を日本で初めて成立させたことで脚光を浴び自信を深めたことが、起業する決意を後押しした。
「イー・ロジットは光輝物流の倉庫などのインフラを活用しています。光輝物流もネットビジネスとふれ合ったことで古い体質から抜け出しはじめている。それは望ましいこと。私は一人息子ですから、いずれは光輝物流を継ぐことになるというのは頭のどこかにあるのです」

業務提携でサービス拡大


 イー・ロジットを利用する顧客の数は今では6000社近く。多くのネット通販業者が集まるショッピングモールが業務提携といったかたちで丸ごと顧客になるというケースが増えたことも追い風になった。登録無料のショッピングモールのなかでは国内最大のテナント数を持つ「ショプラス」、農作物生産者とスーパーや八百屋といった小売業者との企業間取引(B2B)を支援する「e−アグリ」などとの提携がそうである。
 また、電子決済サービスの「サイバーキャッシュ」やECサイト構築用ソフトを手掛ける「コマース21」などの特徴をもった専門業者と業務提携を結ぶことにも積極的に取り組んでいる。
 そうすることで一層のサービス拡大をはかるとともに、EC業界に確固たる地位を確立することを狙っている。提携企業の経営者同士が集まって勉強会を開き、今後の事業展開などを話し合うこともあるという。
 古い体質の残る中小製造業の集積地東大阪市から、斬新なビジネスアイディアで業界に旋風を巻き起こした角井社長の挑戦はまだまだ続く。

2001年10月号


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